『白い夢と光の花』



はっと目を開け、身体を起こすとそこは自室のベッドの中だった。
カーテンの隙間から太陽の光が快斗を照らしている。


「あれは…夢…?」

思わず声に出す。


だってあまりに美しくて、鮮明で。

淡いベールと白いドレス、そして髪飾りの水仙が彼女を彩っていた。



跪き、光に向かってずっと祈っていた。

その姿は、まるで女神…


沢山の、自分の悩みや苦しみが癒されていくようだった。



自分が近づくとその愛くるしい瞳を合わせ、

嬉しそうに、涙目で…口を開く。




「          」




…その言葉だけ、聞こえなかった。





ばたん!と部屋のドアが開く。


「快斗!おはよーーv」

「…ああ…」


先ほどの夢の彼女とリンクしてしまい、ついついじっと見つめてしまう。

「もー!やっぱりまだ寝てたのね!映画、始まっちゃうよ!」


そう言いつつ、ガラスの前の鉢植えに向かう。


「もうすぐ咲きそうだねv水仙!」

「…ああ、なんだかんだ言って結局おめーも世話してるからな」

「うんうん!やっぱり愛情持って育てて、花が咲くときの気持ちって格別だよね!」



鉢植えの花を手に、めいっぱいの笑顔。



この笑顔に、太陽に。いつも支えられている。





「花が咲く日まで、ずっと待ってるからねv」


そう水仙に話しかけて、元の場所に戻す。



「じゃあ快斗、早く着替えてね!下の階で待ってるから」




階段を降りる足音が消える頃。


「『待ってるから』、か…」


小さく小さく、自分だけが聞こえる大きさで呟いた。






あいつは本当に、待っててくれるんだろうか?






以前自問自答した言葉がまた廻る。

仮に待っててくれたとしても、この心を、想いを…受け取ってくれるのだろうか。



ベッドを降り、身支度をする。


昨日脱ぎ捨てた学ランの下のワイシャツが椅子の背もたれに掛かったままだ。

その白いワイシャツを手に、部屋を出た…そのとき。







『ずっと、待ってたの』







後ろから、聞こえた気がした。


振り返ったその時、ワイシャツの白が視界に入った。







刹那、思い出す。







あの夢を。あの場所を。


光射す教会で。彼女と二人きりで白い服に身を包み、一生を誓った。





今は夢でしかないけれど…素直になれないこともあるけれど。


この心の温もりを、少しでも青子に与える事が出来たら…










きっとあれは、水仙が見せてくれた「心」の夢…














日ノ出晴緒様より、当サイトの2周年のお祝いを戴いちゃいましたvv

ウェディングドレスですよ!
手を組んで目を閉じて、大切な人を想う青子ちゃん。

スイセンがくれたひとときの夢は、快斗にとって幸せであったに違いありません。

いつか、現実の世界で実現させる事を、密かに誓ったことでしょう。

ありがとうございましたvv