「誰かさんへの預かりもの」



そう言って、青子が可愛らしくヘソを曲げてから1ヶ月。
バレンタインそのものを知らなかった頃とは違い、今はその中身も意味も隅々まで理解している。
当然ながら、その対となるホワイトデーも然り。


さて、今年はどんなショーにしましょうかねぇ。
















『HAPPY WHITEDAY』





















表の仕事のように、青子だけのショーをとも考えたのだが、
可愛らしくもヘソを曲げたあの言葉を受けて、快斗の中にひとつの企みが浮かんだ。

(俺ってば、やっぱり天才だねー)








3月初旬。

いつもは警視庁宛てに送られるKIDからの挑戦状が、なぜか新聞・テレビなどのマスコミ各社へとばら撒かれた。


『白き日に、ブルーサファイアに永遠の愛を捧げん』


ひねりも何もない、言ってみればただのラブレター。



ところが、コレを出したのがKIDだから、世論は大騒ぎ。


天下の怪盗が『愛を捧げる』相手が誰なのか。

そもそもKIDの素性すら判ってないのだから、推測が推測を呼び、ありもしない名前がいくつも出てくる。

犠牲となった各々方には申し訳ないと思ってはいても、KIDとて一人の青年。
愛しい彼女の為ならば、このくらいの公私混同は許してもらいたい。



などと勝手な解釈をつけて、世に騒動を起こしたのだ。







「何が永遠の愛よ」

愛を捧げる先となっている青子がひとりごちる。


青子に負けず劣らずお祭り騒ぎが大好きな快斗だ。
これだけ世間を賑わせて、さぞ楽しいだろう。

確かに、KIDに意中の相手がいるとなれば、自分がヘソを曲げた原因も少しは減るだろう。


だから青子にしてみれば、嬉しい出来事なのだが、どうもしっくり来ない。




何せKIDの知名度はハンパなく大きい。
加えて、素の快斗の知名度もあがっている以上、どれだけマスコミ経由で牽制したとしても、来るものは来るのだ。

雲の上の存在に憧れる女性はどこにでもいるのだから。



その結果、KID宛と快斗宛の2つがそれぞれ違う方面から集まってくることになり、
元来の天邪鬼な性格が災いして、素直に喜べずにいるのだ。













「・・・・ったく。ストレートに言わねーと、わかんねーかな、あのお嬢さんは」


仕事帰りのビルの屋上。
数時間前の、ヘソを曲げた表情を思い出す。

KIDも快斗も、それぞれ世の女性の憧れの殿方と称されても、
そう想ってて欲しいと願うのは青子一人だけでいいのだ。


もっとも、快斗とて、あのラブレターのみで青子の願い事が全て叶うとは思ってない。
ショーはショーらしく、派手な終焉を迎えなければならない。






「さて、天才快斗様のスペシャルなホワイトデー、決行と行きましょうかね」


















そして、3月14日まであと3時間と迫った21時。
KIDの逃走劇と共に一枚の予告状が空を舞った。












『白き日に、ブルーサファイアの永遠の愛を我が胸に』












相思相愛なんでね、あきらめてくんねーかな。
















突貫工事万歳!
私は、この言葉を一体何度書けば気がすむんでしょう!?

『告白する事によって世の女性の想いを牽制するKID』だった筈なんですが、
どうしてこーなっちゃったんでしょう???

ビミョーに自作既存の作品と似てるのですが、気にしないで下さい(爆)