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どうしよう・・・、バレンタインは明日なのに・・・。
これじゃ、作れないよぉ・・・。
















『包帯バレンタイン』



















バイトも早番にしてもらって、夕方から始める予定だった。

今年挑戦するのは、バイト先のパティシエに教わったトリュフ。
旬の甘いイチゴと、青子が最近ハマってる抹茶の2種類。
細かいレシピもちゃんとメモ済み。
材料も揃ったし、後は青子のやる気のみ!



・・・・・だったのに。



バイト先からの帰り道。
いつもの商店街を通り抜けようと、足を踏み入れたその時。
真正面から突進してきた小学生のグループと衝突して、そのまま転倒。
体を支えようと後ろに伸ばしたら、手のひらが付いた先の地面に割れたビンの破片があって、そのままグサリ。

慌てて近くの病院へ駆け込んだんだけど、思った以上に傷口は深くて、左手は包帯グルグル巻きにされてしまった。


当然、この手では、手作りなんで出来るハズもなく。
キッチンに山積みされた材料と、包帯グルグルの手を眺め、深~い溜息がひとつ出る。


甘いモノが大好きな快斗は、市販のチョコは甘さが足りないらしく、好んで食べようとはしない。
だから、毎年手作りで快斗が満足できる甘さにして渡してた。
パレンタイン自体を知らなかった頃も、青子は甘さの不満を知ってたから。


「ココで悩んでても仕方ないよね。この手じゃ無理だもん」


だったらどうするか。

不満が出ることを承知で市販のモノにするか。
手が治るまで待ってもらうか。

「でもねぇ、治るまでどのくらいかかるんだろう・・・」

記念日はその当日にお祝いしなきゃ、意味がない。
1分でも1秒でも過ぎちゃうと、無になる。

「買いに行こう・・・」

せめて、甘めのモノを。
快斗が不満にならないモノを。

そう決めて、玄関を出た時。


「よぉ」

珍しくも情けない声の快斗がそこに。

「へ?」

何故ここに?
そもそも今日も仕事じゃなかったっけ?


そう思い、目の前の快斗を眺めて、絶句。

頭と腕に青子と同じ包帯グルグル。


「快斗!? なに!? どうしたの!?」
「いや、ちょっとしくじった・・・」

しくじった・・・って、仕事で?
お父さんに捕まりそうになったとか?

「いや、鬼はどっかの探偵」

そのどこかの探偵さんに、手玉に取られたあげく、
迎えに来た寺井さんに病院に担ぎ込まれ、気が付けばこの状態だと言う。


「青子と同じだね」


包帯の巻かれた手を差し出し、目を剥く快斗にコトの次第をかいつまんで説明をして、
チョコの件も謝って、これから買いに行くところだと告げる。


「あー、いいよ。また今度で」
「でも、せっかくのバレンタインなのに・・・」
「たまにはいいんじゃね? 揃って包帯なんて、めったにねえぞ?」



チョコはいつでも食える、作れる。
それより偶然とは言え、2人同じ状態になった事が、不謹慎だが嬉しい。
そう言う快斗の、ちょっと照れた顔。


そうだね。
大人になるにつれて、お揃いの何かなんてなかったもんね。
こんな小さな事なのに、嬉しく思える。
じゃ、青子はぶつかって来た小学生に感謝しなきゃ。

「俺は探偵に感謝するのか? それは却下するぞ」






トリュフは、手が治ってから改めて作ろう。
記念日じゃないなら、新しい記念日にしたらいい。
今年のバレンタインはお揃いの包帯記念日で、何週間か後がお揃いのリベンジ記念日で。
これからも、小さなお揃い、たくさん見つけられたらいいね。







「あ、けど別の甘いモンは貰うからな」

???
別の甘いモノ?











バレンタイン明けの15日。

ゆるゆるに崩れた包帯と、開いてしまった傷口の治療の為、病院を訪れたのは言うまでもない・・・。















2008年、バレンタイン企画参加作品です。


『快青'08バレンタイン・人様のサイトジャック企画』と言う事で、

《Clover Roon》水瀬ゆず様 のお宅をサイトジャックしちゃいました。

ゆずさんちの玄関を開けたら、私の駄作があるという、なんともびっくりな企画です。


ちなみに我が家は、
《風の音色》佐倉井梢様 のサイトジャックに遭いました(笑)


作品のテーマは『お揃いの○○』でしたので、ウチの2人には包帯グルグル巻きになってもらいました。