『手足腰』企画参加作品《主催:LOVE IS TRUTH  maa様》





『心取り』





誰かに何かを教える事を揶揄って言う言葉に『手取り足取り腰取り』というのがある。
正確には『腰』はついてない。

いつだったか、蘭にスケートを教えた時、文字通り『手取り足取り』で教えた。
酒呑みのサカナに「『腰』はなかったのか?」と言ったのは快斗だったけか?
気を使わないヤツらだから、俺も相当酔っていたし、何て答えたか正直覚えちゃいない。
まぁ、ホンネは喋ってないとは思うけど。

あの時、蘭に教えながら思ってたホンネ。

後ろから支える以上、見てくれは『腰を取って』いる。
だけど、本当は『手』よりも『足』よりも、まして『腰』よりも『心』を取りたかった。
どうしてそう思ったかなんて判ってなかったけど、蘭の心に触れたい、取りたいと思ってた。
軽口叩いてる裏で抱えていた滑稽な葛藤。

コナンという小さな体になって、痛い程に知った蘭の『心』。
あの時、臆することなく『心』に触れていたならば、取っていたならば・・・。
好奇心に負けることなく、蘭を一人置いて行きはしなかったろう。


あれから何年経ったのか。
一言で語るには大きすぎる事件を経て、再びあの日と同じリンクヘきた。
あの頃とは違う、とむくれる蘭が傍にいる。

そう、あの頃とは違う。

今ならちゃんと蘭の『心』を取れる。


手を繋ぐだけでいい。

目を合わせるだけでいい。

笑い合うだけでいい。

たわいもない言葉を交わすだけでいい。

互いに両手を広げて、心を広げて、飛び込んで来るのを待っている。




「オメー、本当に出来んのかよ」
「失礼ね! まだ言うの? ちゃんと滑れます!」
「ほぉ、じゃお手並み拝見といこうか?」


そして、もう一度。

──────俺は蘭の『心』を取る







某所茶会にて発案された素敵な企画。
現場にいなかったにもかかわらず部外者のようななかはらの参加を認めていただきありがとうございます。
こんなモンしかかけませんでした、お許し下さ〜い(涙)