怒るのは百も承知だ。
それでも俺はこの計画を実行したい。
青子が何と言おうと、どんなに拒否しようとも、完寿させる!!






『ランジェリーにご用心!?』





珍しく青子との約束もない日曜日。
体調を激しく崩したらしい警部の看病をしたいから、とメールが来たのが昨夜。

「ヒマだな〜」
「快斗、あんた青子ちゃん以外に用事はないの?」
「ねーよ、仕事もさっぱりだしさ〜」
事実、宝石の展示も予定は無い。
茶の間でゴロゴロ、いい若いもんが情けない姿。
会話をふった母親は通販カタログとにらめっこ中。
「あら、これいいわねぇvv 青子ちゃんに似合いそう」
「あ? どれ?」
「だーめ、あんたの目には毒」
「何だよ、ソレ」
「何って・・・、そうね〜、2人ともオクテだから、逆にいいかも」
「は?」
ほら、これよ、と指したページに載っていたもの。

金髪グラマーねーちゃんが着用している、悩殺系ランジェリー。
それも下着のページじゃなくて、ソッチ専門のページ。
フリルいっぱいなもの、必要最小限の布しかないもの。
申し訳程度に色がついているスケスケのもの。
一緒についているキャッチコピーがなんともエロい。

『お好きなフルーツをどうぞvv』

イチゴやらオレンジやらに見たてた色のモノがずらりと掲載されている。

「・・・・・かーさん!!」
「あら、こーゆーの着て欲しいって思わないの?」
いや、思うけど・・・って、フツー母親がそういう話をふるか!?
「青子ちゃんの体型は・・・、Sで大丈夫ね」
あの?
買う気ですか? オカーサン・・・。
つーか、絶対に着ないぞ、青子は。

「大丈夫よ、私からのプレゼントだから♪」
快斗から、なんて言ったら着ないもんね。

鼻歌を歌いながら巻末の注文ハガキに記入しだす母親に、快斗は何ともフクザツな溜息をついた。



─────2週間後。


「快斗〜、届いたわよ〜」
「げっ、マジで買ったのかよ、かーさん・・・」
「ふふvv 待っててね〜、キレイにラッピングしてあげるからvv」
かーさん、語尾のvvはやめてくれよ・・・。

「ハイ、出来たっと。青子ちゃん来るんでしょ? ちゃんと私からって言って渡すのよ?」

アタマいてぇ・・・。

しかし、過去、母親の企みに勝てた事は一度もなし。
  ↓
今回も俺が拒否すれば、多分自分で渡す。
  ↓
ならば、中身は知らないってことで通すか。
  ↓
うまく行けば、着させることが出来るかもしれねーし。

勝手な四段活用を完成させ、思考を切りかえる。

よし、怒るのは百も承知だ。
それでも俺はこの計画を実行したい。
青子が何と言おうと、どんなに拒否しようとも、完寿させる!!


「かーさんがさ、青子にプレゼントだってさ」

「おばさまが? わぁvv 何だろう!」


さて、うまく行きますように・・・。





カウンター910番ゲットの梶高克夢さんのキリリク小説です。
リク内容は『どうにかして青子ちゃんに萌え萌えな下着を着せる』だったのですが、微妙に違ってしまいました。
この後の展開がリク内容ですね(滝汗)
ごめんなさ〜〜〜いっっっ(涙)





という訳で、続き書きました。
克夢さんが、新カウンター300番をゲットされたので、そのキリリク小説としてリクエストいただきました。
それでもこんなモンしか書けませんでした(滝汗)
重ね重ね、ごめんなさいっっっ(大泣)







ランジェリー・パニック 〜続・ランジェリーにご用心〜





「かーさんがさ、青子にプレゼントだってさ」
「おばさまが? わぁvv 何だろう!」

突っ走った思考で母親が買った、悩殺ランジェリー。
あくまでも中身は知らないフリをしなきゃ、話にならない。

「知らね〜、聞いたけど教えてくんねーんだよ」
「楽しみ〜vv」
「青子に似合うはずだから、絶対に着て欲しいんだと。そんで俺に感想言えってさ」

最後のは嘘だ。
ただそう言っておけば、とりあえずは着てくれるだろう。

「感想?」
包装を解いていた手を止め、訝しげに聞いてくる。

あ、ヤバ。
警戒されたか?
えぇぃ、もうヤケクソだ!


「『あんたは言葉がなさすぎ。服とか小物とか、青子ちゃんが持ってるものに、きちんと感想を言ってあけなさい』だと」


苦し紛れの理由を母親の声真似でして、青子の警戒心を解こうとする。

「そうよね〜、快斗ってば、ホントに何も言わないよね。おばさま、良く判ってるぅvv 今日だってオニューの服なのにな〜」
「いや、新しいのだってのは判ってるんだけどさぁ・・・」
面と向かって言うのは照れくさいんだよ! 判れよな〜。

動き出した青子の手が、全ての包装を解いて箱を開けた瞬間に再び止まった。
みるみる真っ赤になる青子の顔を眺めつつ、あくまでも知らないフリをする。

「どうした? 何が入ってンだよ、それ」

「快斗・・・。これ、ホントにおばさま? 快斗じゃなくて?」
「は? 何で?」
「・・・・・・・・・・」
「だからどうしたんだよ?」

知らないぞ、俺は知らないんだぞ。

「これ着た青子の感想を言えって、ホントに言ったの?」
「あぁ、そう言ってたけど、いったい何なんだよ」
「嘘! 絶対に嘘! だっておばさまがこんなの買うわけないもの! これ、快斗でしょ!?」


さ〜て、作戦開始。


ひょいと顔を出し、箱の中身を見る。
あくまでも、今始めて見たという顔をして。

「/////! なんだよ、コレ!!!」
普段は見せない、真っ赤になった顔を作って、困惑してるぞってのを演出する。

「えっち! スケペ!! バ快斗!!!」
箱の蓋を閉め、俺に食いかかる。

「ちょ、待てって、ホントに知らないってば、俺じゃねーよ」
「嘘だぁ・・・、じゃ、証拠見せてよ」
「証拠ったってよ・・・、ちょっと待ってろ」

青子を部屋に残し、探し物をするフリをして下へ降り、用意しておいた、納品書を取り出す。

納品日は昨日、注文主は母親、商品名は『ランジェリー・フルーツコレクション』
あくまで母親が買った事を印象づける為(事実だが)、住所や名前は黒で消してある。
物騒な世の中なので、自宅住所や名前が書いてあるものは、黒マジックで消した方がいい、と青子に教えていた母だ。
しかも捨ててあったものを拾った事にして、くしゃくしゃにしてある。

これを見せれば、信用するだろう。
それに、俺はこんな面倒なことはしない。

「ほら、これ」
青子にその納品書を差し出す。
納品書にある商品名と同じ文字が、箱に書いてある。

「・・・・・、信じらんないよぉ・・・」
「けど、俺じゃないぜ。俺がカタログショッピングなんてするかよ」
「それはそうなんだけど・・・」


さぁ、あと少し。


「じゃ、感想云々が嘘なんだ」


ズルっ!
ここまできて、そう来るか!
ちくしょう、そっちの対策は考えてなかったぞ。
どうする、どうする、黒羽快斗!


「でも、色はキレイだね、これ・・・」

ん?
イケるか?
ならば、最後のひと押し。

「なぁ、着てみねーか、ソレ」
「え? えぇぇぇぇぇ! 何で!!」
「何でって、見てみたいんだよ、ソレ着た青子」

あくまでもストレートに、優しく、口説くように。

「ヤだよぉ・・・」
「かーさんが何考えてんのかは判んねーけど、似合うから買ったんじゃねーの。だったらさ、着てみてくれよ」

あくまでも母親が願ったのだ、と強調する。

「でも・・・・、ここで?」
「どーしてもイヤだってんなら、いいよ。青子に無理させたくねーからな」

言葉は殊勝だが、顔はホントに残念ってのをありありと出しておく。
下心はばっちりあるけどな。

「青子が好きだから、すっげぇ好きだから、青子の全部を知りたいから、こういうモノ着た青子も見たいって思ったけどさ・・・。
 やっぱり嫌だよな・・・。手出さないって約束できねーし」

「かい・・・と・・・」

「あきらめるよ。かーさんには適当に誤魔化しとくから」




「・・・・・・いいよ」




よっしゃ、成功♪


「無理してねーか?」
「・・・ううん、してない。だって青子も快斗が好きだもん。
ちょっと恥ずかしいけど、おばさまがせっかく選んでくれたんだし、
快斗がそれで喜んでくれるなら、青子も嬉しいから」
「青子・・・・」

ヨコシマな感情いっぱいの作戦は見事に成功。
少しばかり良心は痛んだが、その分はしっかりご奉仕するから勘弁な。

着替えるために部屋を出た青子に、心の中で詫びを入れた。


ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ


「あら、ずいぶんとご機嫌ね」

すったもんだの騒動の翌日。
母親の帰宅前に青子は家に戻った。
どうしたって、ニヤけた表情は直らなかった。


「その様子だと、成功したみたいね〜。でもちゃんと避妊はしなさいよ〜?」