「もう終わりなのかな・・・」
「そうだね・・・」
「ナニ言うとんの! 早まったらアカンて!」


『すれ違う心』



新一&蘭(side 蘭)

抱えていたややこしい事件が解決したとかで、新一が帰ってきた。
やっと会える。いなくなって初めて気がついた気持ち、ちゃんと言える。
そう思ってたのに、事後処理が残ってるとか、世話になった人がどうとかって言って、私と会う時間すら取ってくれない。
ねぇ、私がどれだけ新一に会いたかったか、知ってるんでしょう?
貴方がコナン君だった事、気付いてたのよ?
帰ってきたら、ちゃんと話してくれるって信じてたのに、何故?
私をほったらかしにして、何をしてるの?
新一の家になぜ哀ちゃんがいるの?
もう、わかんないよ。
私の想い、告げる事もなく、消さなきゃならないの?



新一&蘭(side 新一)

やっと、戻れた。
コナンでいる時に、知ってしまった、蘭の想い。
どうすることも出来なくて、真実を告げようとした事は一度や二度じゃない。
だから、戻れたら、真っ先に想いを告げるつもりだった。
組織は壊滅させ、事後処理が残ってたが、そんなものかまやしない。
なのに、どうしてもほっとけない事件が起きた。
戻っても、誰も待ってる人はいないから、と子供のままでいることを望んだ灰原が自殺を図った。
幸い、発見が早かったから、大事には至らなかったが、そこまで傷ついていた彼女を一人にしておけなかった。
結局、蘭ともまともに会ってない。
二度と待たせはしない、そう言って帰ったのに、しょっぱなからこれだ。
灰原のせいじゃないが、どうにもならない。
蘭、もう少しだけ、待っててくれ。
全てを話すまで。



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快斗&青子(side 青子)

「KIDはもう終わったよ」
そう言って、KIDを廃業した快斗。
お父さんに悪いと思いながらも、快斗が捕まるのは嫌で。
翌朝、昨夜はこうだった、と得意そうに、悔しそうに話すお父さんの顔を見ながら、快斗の無事だけを祈った。
忙しい毎日から解放されて、ようやく青子と一緒にいてくれる、そう思ってた。
なのに、事後処理が残ってるとか、世話になった人がどうとかって言って、青子と会う時間すら取ってくれない。
なぜ? 放課後、一緒に帰る事も出来ないほど、大事な事?
毎日毎日、工藤君と何をしてるの?
青子、知ってるんだよ?
工藤君と快斗が、青子の知らない子と話してたこと。
判らないよ、どうしてなの?
青子のこと、嫌いのなったの?



快斗&青子(side 快斗)

「KIDはもう終わったよ」
そう言って、俺はKIDを廃業した。
許される事じゃないと判っていながら、側にいたくて、青子に嘘をつかせてきた。
迫り来る時に焦り、だんだんと荒れていった俺の心を、何も言わずに癒してくれた。
今までの罪滅ぼしも兼ねて、これからは青子だけを見ていく。
そう決めたのに、どうしてもほっとけない事件が起きた。
新一を小さくした組織と、親父を殺した組織に関わっていた哀ちゃんが、自殺を図った。
彼女には、組織のことを教えてもらった。親父の事も知りうる限り話してくれた。
新一は蘭ちゃんに会う時間を割いてまで、彼女に付き添っていた。
人事じゃない。俺もそれに倣った。
ごめん、青子。一緒にいると言ったのに、しょっぱなからこれだ。
用事がある、と先に帰る俺に、一瞬だが淋しい瞳を向けている事、気付いている。
もう少しだけ待ってくれよ。
彼女が落ち着くまで。



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「そっか、快斗が話してた子、哀ちゃんって言うんだ」
共に事件と仕事に彼氏をとられた乙女が3人。
街角のカフェで深刻な顔。
「うん、阿笠博士のところにいるんだけど、親戚なのか、その辺はよく判らなくて・・・」
ロングヘアの乙女が溜息をついている。
「何してるんだろうね、快斗も工藤君も」
知らない人が見たら、双子かと思うほど似通っている、もう一人の乙女の溜息。
「判らない、新一、何も話してくれない、会ってもくれない」
「快斗もだよ。学校終わると、青子の顔を見ずに飛び出して行っちゃう・・・」
「何してんやろな、2人とも」
ポニーテールの乙女の溜息。
「お世話になってた人がどうとかって言ってたけど、それ以上は教えてくれなくて・・・」
「うん、今度も青子達は知っちゃいけない事なんだろうね」
「そうやってまた秘密を増やしていくんだ、新一は・・・」
「「蘭ちゃん・・・」」
蘭、と呼ばれた乙女がジュースのストローを回しながら、今にも泣きそうな顔をしている。
「新一がコナン君だった事、気付いてたんだ・・・」
「そ・・・うだったの?」
「うん、新一、言いたくないみたいだったから、知らないフリしてたんだけどね」
「そうやったん。それで平次、コナン君のこと工藤って呼んでたんや」
「うん、私もそれは気付いてた。だってコナン君の苗字は江戸川だもの。おかしいなって思って、すぐにピンときたから」
「けど何で黒羽君まで? 関係ないんとちゃう?」
「判らない・・・、その哀ちゃんと快斗がどういう関係なのか、青子は知らないし。
 ただ、コナン君、工藤君とは前から知り合いだったみたい」
自分を名で呼んでいる乙女も同じく泣きそうな顔をしている。
「新一と?」
「怪盗KIDって知ってるよね?」
「知ってるよ」
「大阪にも来たやん」
「あれ、快斗なんだよ」
「え? ホント?」
「青子にはすぐ判ったよ。あぁ、快斗だって。お父さんが追いかけてるから、どうしてか、なんて聞かなかったけど」
「「そう・・・」」
「快斗は理由もなしにあんなことしないし、絶対何かあるんだって思ったから。
 快斗が話すまでは知らないフリしようって。
 でもね、ケガとかしてくるとどうしても言いたくなっちゃうんだ。正直、苦しかった」
「「青子ちゃん・・・」」
「ホラ、青子って嘘つけないから、苦しくなってるのが快斗にバレちゃったんだ。
 快斗を責める事は絶対にしたくないから、一生懸命ごまかしたんだけど、できなくて・・・。
 そしたら、快斗、話してくれた。自分がKIDだって。
 詳しい事までは話してくれなかったけど、今は、KIDをやめる事はできないって」
「お父さんには?」
「言わなかったよ。言うつもりもなかったもん。快斗が捕まっちゃうなんて絶対嫌だったし。
 話してくれたのは、青子を信じてくれたからだって思ったから」
「そう・・・」
「平次はニ人のサポートみたいな事してたんやな。事件でもないのにしょっちゅう東京行っとったから」
「ごめんね、和葉ちゃんまで巻き込んだみたいで・・・」
和葉と呼ばれた乙女は、そんな二人の相談相手だろうか。
「そんなん、気にせんといて。勝手に首つっこむ平次が悪いんやし」
「もう、終わりなのかな、私達・・・」
「そうだね、信じたくないけど・・・、そうなのかな・・・」
「ナニ言うとんの! 二人とも早まったらアカンて!」
思いもかけない言葉を出されて、和葉の声が少し高くなる。
「「う・・・ん」」
「工藤君も黒羽君も、ちゃんと話してくれるって。信じてなアカンよ」
「信じたいけど・・・」
「うん・・・」
完全に意気消沈している二人。
「ちょぉ、待って。 アタシ、平次に聞いてみるから、絶対早まったらアカンで!」


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「ねーちゃんの様子、どうや?」
どこで聞いたのか、服部がかけつけた。
「あぁ、やっと落ち着いた。今、博士がついてる」
「とりあえず一安心ってとこだな。発見が早かったから良かったよ」
「まさか自殺を図るなんて、思いもしなかったよ」
「彼女の強がりに気付くべきだったよな」
「しゃーないやん、それどころじゃなかったんやろ」
「まぁ・・・な」
組織を崩壊させたとは言え、当時者である以上、事後処理に立ち会わなければならないのは当然。
しかも灰原=宮野の存在を隠したままの状態なので、更に時間も手間もかかる。
KIDの素性を明かす事は出来ないので、表立って動けるのは新一のみ。
快斗も平次も所詮は裏方。この件に関して警察に出向く事は出来ない。
二人がいくら愛しい彼女との時間を望んでも、かなわないのである。
組織の崩壊と彼女を両天秤にかけることは不本意であってもできないのだから。
そこへきて、今回の自殺未遂騒動。
幸い、発見が早かったため、大事には至らなかったが、それを放っておけるほど、自分は薄情じゃない。
何も事情を知らない少年探偵団は真っ青で、
歩美にいたっては、コナン君に続いて哀ちゃんまでいなくなるの?と灰原に泣きついた。
灰原哀のままでいることへの覚悟が足りなかった、と当人の俺達への弁明。
それでも一人でいることを望む灰原の説得は正直難しかったが、何より歩美の涙がきいたらしい。
彼女が落ち着いたのは、全てが終わったあの日から1ヶ月が経っていた。
「なら、大丈夫やな。あのな、お前ら、早いとこ誤解解いたほうがええで?」
服部の表情が意地悪いように見えるのは気のせいか。
「「誤解?」」
「和葉が言うとるんやけどな、毛利のねーちゃんと中森のねーちゃん、お前らと別れる気ぃでおるらしいで?」
「「は?」」
「せやから、灰原のねーちゃんにかまってて、ほったらかしてんのやろ? 浮気した思うとるらしいで?」
少しオーバーだが、このさいまぁええか。
「「浮気ぃ?」」
「おぅ、灰原のねーちゃんと一緒のところを見たんやと。工藤んちにおったんやろ?
 毛利のねーちゃんはそれを見かけたらしいで」
「だからって何でいきなり浮気になるんだよ! 蘭は灰原のことは知ってるんだぜ」
「工藤んちにおったーゆーことが問題やて、和葉は言うとったで?」
「だったら青子は関係ねーじゃん、あいつは哀ちゃんのこと知らないんだぜ」
「そやから、中森のねーちゃんも見たんやて。工藤んちに行ってるのは知っとったんやと」
「マ・・・ジ?」
「後つけたんやと」
「KID廃業してから鈍くなったんじゃねぇの? オメー」
「うるせー、人こと言えるか」
「ま、オレには関係ないけどな、どうするんや? お二人さん」
「「うるさい!」」



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新一&蘭

放課後、一人で帰ろうとしていた蘭を呼びとめ、自宅へ誘った。
「新一? 忙しいんじゃないの?」
蘭の表情は心なしか暗い。
あぁ、やっぱり・・・。
「いや、もう終わったよ。ゴメンな、もう待たせないって約束したのにさ」
「・・・・・・」
「蘭、聞いて欲しいことがあるんだ」
「何?」
蘭に全てを話した。コナンの事。組織の事。灰原の事。そして今回の事。
長い、長い話を終えて、ようやく蘭が口を開いた。
「新一・・・、ゴメンね。私、知ってたんだ、コナン君が新一だって事。
 でもいつか話してくれるって信じてたから、知らないフリしてたの」
「え?」
「何度聞こうと思ったか知れない。でも隠したかった新一の気持ちも判ったから、黙ってた」
「蘭・・・」
「哀ちゃんの事は知らなかった。彼女、辛い思いしてたのね・・・」
「今度の事で、一番辛かったのは、灰原だからな」
「新一・・・」
「服部がさ、蘭が俺と別れる気でいるって言ってたけど、ホントなのか?」
努めて普通に聞くが、答えを聞くのが怖い。
「・・・・、新一がこのまま話してくれなかったら、そうしてたかもしれない」
「蘭!」
「仕方ないじゃない、やっと会えたと思ったのに、会ってもくれなかったんだから」
「ゴメン、灰原のこと、どうしてもほっとけなくてよ」
「ううん、いいの。むしろそんな事したら、怒ってたかもね」
「蘭・・・」
「哀ちゃんにとってはコナン君だけが頼りだったのよね・・・。私はそんな彼女からコナン君を取ってしまった」
あぁ、蘭はいつもそうだ。自分の傷などニの次で、他人を気づかう。
「情けねーよ。服部に言われるまで、気付きもしなかった。蘭が苦しんでた事にさ」
「ごめんね、余計な心配かけちゃって」
あぁ、どうして・・・。謝るのは俺だろう。
「俺さ、蘭が好きだ。帰ってきたらちゃんと言うつもりだったんだ。こんなに遅くなっちまったけど」
「新一・・・」
「ガキの頃からずっと好きだった」
「嬉しい・・・、私も好きだよ、新一が大好き」
何時の間にか涙を溢れさせる蘭が愛しくて。
手を伸ばして抱き寄せて、苦しめた詫びの気持ちも込めて、唇を重ねた。



ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ


快斗&青子

「あおこ〜、一緒に帰ろうぜ〜」
「バ快斗! 大きい声出さないでよ!」
前の方を歩いていた青子に声をかけた。
「用事はもういいの?」
「ん・・・、終わった」
「ふーん」
「ちよっとさ、公園寄ってかねーか?」
「いいけど?」
青子のリクエストを聞いて、自販機でジュースを買ってくる。
「なぁ、服部から聞いたんだけどさ、俺のこと嫌いになった?」
「な・・・に?いきなり・・・」
「別れる気でいるらしいって言われた」
突然黙り込んだ青子に、手遅れだったのか?と嫌な予感が走る。
「・・・だって、快斗、青子のことずっと無視してたじゃない」
「無視はしてねーよ、ちょっと事件あってさ。な、ちゃんと話すから、考え直せよ」
「・・・聞いてから考える」
素直じゃないねぇ。
それから今までのことを話した。新一の許可は取ってるから、コナンが新一だった事も含めて。
青子が驚かなかったのはちょっと意外だったけど。
「そう・・・だったんだ。哀ちゃん、可哀想・・・」
まるで自分の事のように話す青子は既に涙目。
「親父の事もあったしな、ほっとけなくてよ」
「工藤君もホントに大変だったんだね。でも良かった。蘭ちゃん、もう大丈夫だね」
新一の事はどうでもいいんだけどな。あんまり関心持たないでくれよ。
「で? どうするの? 別れる?」
あくまでポーカーフェィスたが、心臓はバクバク言ってる。
「バ快斗! 判ってて聞いてるでしょ? イジワル!」
「判んねーよ、青子泣かせたのは事実だし」
反省してます、との気持ちを込めて、少し落ち込み気味に言ってみる。
「もぉっ、青子、淋しかったんだからね!」
「ゴメンって、もう一人にしないからさ、な?」
ふくれっつらの青子を笑顔にしたくて、得意のマジックをだした。
1・2・3!ポンッ!
青子に似合いの、小さな白い花。
みるみる顔色が変わり、それでも誤魔化されないんだから、と少し膨れる青子が愛しくて。
抱き寄せて、その小さな額にキスを落とした。
「バカ! こんなとこで!」
「誰も見てねーよ」
「そーゆー問題じゃなーいっ!!」



ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ


「結局、どーなったんや、あいつら」
「ちゃんと話してくれたんやて、良かったぁ」
「そーか」
「なぁ、平次は? 平次も二人みたいに黙っとくん?」
「あ? ややこしーなるの判っとったら、言うで?(多分な)」
「ホンマ?」
「信用せーっちゅうに」
「信用できんから聞いとるんやん」
「あのな・・・」

end




東海帝皇会長さま(Minatomirai Ace Heaven様)へ投稿したものです。
4回に分けて連載という形で投稿したものですが、一括しました。