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『時計台の下で〜優しい刻』
「あ、見て快斗。時計台載ってる」
定期的に買っている雑誌に、今月の特集として世界各国の時計台が掲載されていた。
日本最古の時計台、北海道の『旧札幌農学校演武場』
アメリカ・コロラド州の『木目調の時計台』
スイスとドイツの国境近く『ボーデンシー湖小島、リンダウの日時計』
日本最大の花時計、静岡の『土肥の花時計』
そして、2人にとってとても大切なあの駅前の時計台も・・・。
「すご〜い、載ってる」
「あ〜? まーKIDも狙ったしな〜」
「他人事みたいだね」
「ん〜、何とのことかな〜?」
記事にも、過去怪盗KIDに狙われたと書いてある。
時計台オーナーの事件には触れてなかったけど。
「ねぇ、今更だけど、あの時計台狙った理由ってホントは何?」
「だから、時計台にダイヤが・・・」
「嘘! ニュースでは、KIDはニセモノだと気付かなかったって言ってたけど、そんなワケないじゃない」
「猿も木から落ちる、弘法も筆の誤りっつーコトで」
「バ快斗! 例えKIDがバカだったとしても快斗は違う! そういう知識は人一倍持ってるクセに」
未だにKIDに対しては辛口なのに、快斗に対しては甘いことも口にする。
その言葉の裏に、青子の快斗に対する尊敬の大きさを感じる。
「あーもー」
正直、思い出したくねーんだよ。
あの探偵馬鹿までセットで出てくるからさ〜。
「そう言えば、工藤君と始めて対決したのがあの日だったんだよね」
「それを言うな」
くすくす笑う青子に、もはや言い返す気力もなく。
「思い出、守ってくれたんだよね」
「・・・ハイ、ソウデス」
「ありがとう」
「おれ、黒羽快斗ってんだ。よろしくな」
そう言って青子に小さな花を渡してから20年。
2人を取り巻く環境は大きく変わったけれど、時計台は昔のまま。
今日も優しく時を刻む。
2人の、たくさんの人の想いを乗せて・・・。
2008年の秋、新潟にて行われたプチオンリー『時計台の下で』にて、現地不参加スタッフとして参加した時の作品です。
もやは短編しか書けず、お茶を濁したシロモノでした(汗)
でも、懲りない私は、またこういう企画には乗るんだろうなぁ・・・。
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