『You can’t be won』



「なぁ、めーたんてー」

「その言い方ヤメロ。おめえに言われるとイヤミにしか聞こえねぇ」

「細かいこと気にするんだな」

「うるさい」

「普通に相槌打てねぇのかよ・・・」

「打って欲しいなら、普通に話せ」

「あぁぁぁ、もー、あー言えばこー言う!!」

「何をイマサラ」

「・・・・・・・・・・」

「で、何の用だ?」


互いの愛しい彼女に置いてけぼりをくらった日曜日。

年頃の女の子には、彼氏よりもイベントが勝つ日だってあるのだ。

それでも荷物持ちと称して着いていくつもりだったのだが、今日はパス。

行き先が悪い。


恨むぞ、母さん・・・。



引退してもなおその名声が止まぬ元女優工藤有希子。

某有名下着メーカーから、彼女がデザインした新作が発売される事となった。

今日は、その発売を記念して、抽選で選ばれた10名+2名に、彼女自らがフルコーディネートするというイベントがある。

もちろんこんな素晴らしい企画に、将来の嫁を参加させないなんて事、有希子がするはずもなく。

それでも公平は期さなきゃならないので、モデルが必要とメーカー側にねじ込み、蘭と青子に白羽の矢を立てた。

青子までが参加する事になったのは、一人は心細いという蘭のたっての願いだ。



で、これは女性の下着のイベントだ。


当然だが男子禁制。

関係者すべてが女性。

取材に入る雑誌記者も女性が限定。

入口警備員も女性と細部まで手配は行き届いている。


そんなイベントなのだ。


名探偵と泥棒が同伴できるはずもなく。

“男子禁制”という有希子の言葉を渋々信じ、にこやかに(内心はイライラで)送り出した。


「今ごろ、何してっかなー」

「青子ちゃんか? イベントに出てるだろ」

「・・・・・。蘭ちゃんもな」

「気安く呼ぶな」

「あのねぇ・・・。だったら青子の事も気安く呼ぶなっての!」

「黙れ。何だって泥棒と一緒に茶しなきゃなんねーんだよ」

「しょーがねーだろーが! 男子禁制のイベントにどうやって行くんだよ・・・って、そうか、男子じゃなきゃいいのか・・・」

「おい・・・・。変装とかくだらねー考えはするなよ」

「何で? 女子だったら問題ねーんだろ」

「判ってんのか? ステージのど真ん中に、俺の母さんがいるんだぜ?」

「そりゃそうでしょ? 有希子サンのフルコーディネート・・・」

「だから! 今回はやたらと力入っててよ、関係者全員の衣装もデザインしてんの! おめぇ、どこでソレ手に入れる?」

「スタジャンってヤツ?」

「人数分ギリギリしか作ってねぇんだとよ。母さんにはお見通しだったんだよ。
 どっかのキザな泥棒が変装して来たがってるなんて事は」

「げ! マジ?」

「ついでに言ってく。母さんの頭の中には関係者全員の3サイズがインプット済みだ。顔を似せても無駄だ」


スタジャンに余りがないなら、誰かと入れ替わって・・・なんて事できねーし、
仮に頑張って変装しても、骨格の違いまでは隠せねから、あきらめるんだな。


「有希子さーん・・・。そこまでするかぁ!?」

「あきらめろ。俺の母さんだ」

「息子が何とかしろーー!」

「断る、つーか、諦めた」



工藤邸のリビングに、快斗の叫びが虚しく響き渡った。









おまけ


「あぁ、そうだ。出掛けに置いていった。オメー宛ての手紙」

「は?」


『ごめんねぇ、快斗くん。せっかくの休日に青子ちゃん借りちゃって。

お詫びに、最高のコーディネートでお返しするから、期待しててね〜vv』



手紙と共に渡されたのは、ホテルのスイートの予約券。


「8時頃には終わるんだと」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




「蘭が着く前に、出てけよな」






end








『10』管理人ゆうきさんへお誕生日のお祝いとして差し上げたものです。
リクエストは新一と快斗(&平次)のおバカな話でした。
関西弁がどうしても書けずに、平次は出番なしとなりましたが(汗)
それにしても、ウチの有希子さんは、どうしてこうも最強なんでしょうねぇ・・・(激爆)