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思想花
『一哉は亡くなりました』
一之瀬君のお父さんから連絡をもらった時、目の前が真っ暗になった。
何で? どうして?
信じられなくて、嘘だって思いたくて、土門君と一緒に一之瀬君の家に行った。
お母さんの動揺が激しいから、今は遠慮して欲しいという、お父さんの言葉に何も言えず、二人で泣きながら帰った。
結局、お葬式に出ることも、お別れも出来ないまま、日本へ帰り、私は雷門中へ。
一之瀬君の事を引きずったまま、サッカーボールを見るのも辛くて、
河川敷にあるサッカーコートを避けるように、日々が過ぎていった。
そんな時、教室の窓から見かけたのが、円堂君だった。
とにかくサッカーが好きで、本当のサッカー馬鹿だという噂も聞いた。
一之瀬君みたい。
それから、彼を見かけるたびに、一之瀬君が浮かんで来て、彼が一之瀬君だったらいいのに、なんて思う自分がいた。
そう、私は円堂君の向こうに見える一之瀬君を見ていた。
彼との会話も、時に一之瀬君と話してるような、そんな感覚にさえ陥った。
実は彼が生きていて、明日の飛行機で日本に行くなんて電話を貰った時も、びっくりはしたけどやっぱりって思った。
だって、私の中では、一之瀬君は生きていたから。
雷門に土門君が来て、一之瀬君が編入して、学校は違うけど西垣君もいて。
私たちのトライペガサスも復活して。
何もかもが夢のようで、今度こそずっとずっと続いて欲しいって、そう思ってた。
FFIが始まって、一之瀬君と土門君はアメリカに行ってしまったけど、また会えるって信じて疑わなかった。
だから、あの告白はショックだった。
また、いなくなっちゃうの?
もし手術に失敗したら、また消えてしまうの?
そう思ったら怖くて震えそうになった。
アメリカとの試合も、怖くて怖くてたまらなかった。
ちゃんと見てなきゃいけないって言い聞かせて、必死で目を開けて。
途中でグランドを去った彼を追いかけたくて、でも出来なくて。
試合の後、また帰ってくると約束してくれた、あの言葉が嬉しかった。
ねぇ、一之瀬君。
手術の日、決まったら教えてね。
貴方に言いたいことがあるの。
最初に貴方を失ってから、密かに想い続けていた言葉を伝えるから。
そして、帰ってきたら、その返事、聞かせてね。
秋ちゃんの一之瀬に対する想い。
そんでもって円堂の扱いが酷い・・・(苦笑)
でも、ウチの円堂君はその辺のトコロは疎いんで、何も気にしてません、つーか判ってません(爆)
それに、円堂君には冬花ちゃんいるしねー。
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