首尾よく現れた巨大クドウに白い怪盗はキザは笑いを浮かべて隣にたたずむ唯一キッドを虜に出来る女性に手を差し伸べる。
普段なら滅多に履くことのないパンツスタイルだが文句は言わない。

「お手をどうぞ、青子姫。」

差し出された手にクスリと笑って手を重ねる。
前から約束した場所に連れて行ってくれるのだ。

天候と風向きがいい日を選び、キッドは手を廻してワザワザ東の名探偵とその恋人である毛利蘭を放した。
殆ど狂いなく現れた巨大クドウを尻目にキッドは風に乗って青子の望んだ場所まで連れて行く。
巨大クドウを出現させたのは関心をあちらに引くため。
怪盗キッドが女の声を運んで空を飛んでいたら目立って仕方ない。
巨大クドウはいいカモフラージュだ。

ついた所は東都タワーの特別展望台の上。
かなりの高層だが青子は嬉しそうに眼下に広がる夜景に可愛らしい歓声を上げる。
まぁ一部スポットライトが当っている物体は居るが・・・・

「空から見るのとまた違って綺麗ねvv」

青子はキッドの腕に両腕を絡めて夜景に魅入る。

「ありがとうvv」

極上の笑みを浮かべる青子に快斗はキッドの笑顔を浮かべる。

「お礼の言葉も嬉しいのですが・・・態度でお示し願いますか?」

その言葉に一瞬きょとんとした青子だが、もうっと言って少し頬を染めると腕をぐいっと引っ張ってその頬に小さなキスを送る。
それに上機嫌に笑った次の瞬間快斗に変わる。

「俺には?」

青子は小さく呆れながらも快斗になった頬にもちゅっと可愛らしいキスを送る。

「快斗もありがとうねv」

ご機嫌になった快斗が青子と同じように夜景を見る。

どうしたって動く物体に目が言ってしまう。
不器用なそうな手が小器用に動いてマンションのベランダから窓を開けて犯人をつまみ出す。
犯人を目の前に持ってきてコハーと怪しげな吐息を吐いて諭している。
独りの犯人が血迷ってマンションの屋上に逃げたらしい。
両手がふさがっていた巨大クドウはカフッと犯人をくわえた。
声にならない悲鳴がここまで聞こえてきそうだ。
青子をその様子を見詰める。

「・・・工藤君って蘭ちゃんが不足すると現れるんだよね?」

新一を知るものなら当たり前になってしまったことを青子が確認するように聞いてくる。

「ああ。」

「不足ってことは補充するんだよね?」

青子はそこが分からないという顔をしてクドウを見ている。

たとえあんな姿だとしても青子の関心が他の男に向くのは許せないし、俺と居るときに他の男のことを気にするなんてお仕置だな。
でもそういえばそうだな・・・蘭ちゃんを不足を解消するには補充するしかないよな・・・・
新一や蘭ちゃんに聞いたことはないけど多分・・・・

「教えてやろうか?」

にやりと嫌に寒い笑いをした快斗に青子はブンブンと力いっぱい首を振る。

「いい。蘭ちゃんに聞くから。」

離れたくてもここは高層で快斗から離れることは出来ない。

「多分、蘭ちゃんも教えられないとおもうぜ。」

ますますその笑みを深くした快斗に青子はうぅと逃げようとするが
せいぜい逃げられても快斗の手を握る距離だし放すことは出来ないので逃げられないのだ。

「どうして快斗が分かるのよ。」

腕の距離分はなれてそういうが快斗のニヤニヤ笑いは変わらない。

「これだからだよ。」

腕を引かれるとたちまち青子は快斗の腕の中に戻ってしまう。
びっくりして見上げた瞬間唇が重なった。
息ですら出来ないキス。
青子の抵抗が収まり力が抜けた所で開放した。

「蘭ちゃんが言えるわけないだろう?」

力が抜けてしまって快斗に支えられている青子は潤んだ瞳で快斗を見上げる。

「バ快斗」

それにも満足げに笑うと快斗はキッドに戻り青子をふわりと抱き上げる。

「どうやら、巨大クドウも居なくなるので私達も戻りましょう。」

綺麗にウインクを決めて二人はまた光の宝石箱の中へと飛び立った。






「平次〜〜工藤君またテレビに出とるよ〜。」
「なんや?どんな・・・」

事件やと繋がる言葉は画面を見て止まった。

「クドウやないか・・」

和葉は平次が持ってきてくれたおせんべいを食べると不思議そうに画面に見入る。

「工藤君・・・どうやって犯人見つけてんのやろう?」

素朴な疑問に平次もそやなとおせんべを食べる。

「匂いでもするんやないか?」

二人はのんびりとお茶をすすった。
我かんせずとお茶をすする平次を和葉はちらりと見詰める。





久しぶりに大阪から上京して女の子三人で買い物をしていた時突然現れた巨大クドウ・・・
テレビで見たことはあったが実物は初めてで驚いていたら、蘭ちゃんは困った顔をして青子ちゃんは楽しそうに笑っている。

「なんや?」

不思議に思って楽しそうな青子ちゃんに話しかけるとくすくすと可愛らしい含み笑いを零して内緒話のように耳元で囁いた。

「あれね。工藤君なの。」
「へ!?ほんま?!」

思わず上げてしまった声に蘭ちゃんが苦笑混じりで振り向いて照れくさそうに笑う。
それで青子ちゃんが言うのが本当なのだと実感した。
蘭ちゃんは困ったような少し嬉しそうな複雑な顔をして工藤君を呼んだ。

「新一!」

その声に巨大クドウがグルリと振り向く。
なんとなく・・・・ぱぁぁぁと顔が輝いて・・・・指に摘まんでいた犯人と思しき人間を警察に押し付けて・・・
その姿は途端に小さくなり居なくなったように見えた。
よく見たら蘭ちゃんの髪にへばりついている。

・・・・・平次はどこいったんやろう?
確か一緒に事件を追って和葉より先に上京していたはずだだが・・・一緒に行動していなかったのだろうか?

「青〜子。」
「快斗。」

振り向くと工藤君くりそつの快斗君がにこにこしながら立っている。

「快斗君、平次知らん?」

それに快斗は全世界の・・・・・見栄えのいい笑顔ではなく、まるでいたずらっ子のような笑顔を見せて自分の頭を指差した。
青子ちゃんはその横で首をかしげている。

「事件は解決したし、蘭ちゃんと和葉ちゃんはしばらく忙しいだろうから、青子喫茶店付き合ってくれよ。
あいつら信じられないことに俺が甘いもの食べようとすると文句言うんだぜ。」

一気にそう言って青子ちゃんの肩を抱くとくるりと背を向ける。

「え!?でも!?」

何とか振り返りながら青子ちゃんがこっちを見るが和葉は乾いた笑いでそれを見送った。

・・・・・快斗君・・・おおきに・・・

ポニーテールがさっきから何かに引っ張られている。
多分・・・・間違いなく・・・・・
そっと髪に手を伸ばすと・・・・・カハ〜吐息とも取れる言葉?を出す・・・・多分平次がいた。
カハ〜〜なのにそれが和葉と名前を呼んでいるのが分かる。

三日ぶりの再会がこれだと喜びもひとしお・・・な訳はない。
どうしたもんかとさかさか平次を見詰め、対処に困って蘭ちゃんを見ると
コハーとクドウ君が何かを言うたびに頬を紅く染めて恥らっている・・・
はた目には変だが多分・・・工藤君のことだから蘭ちゃんに素でキザなことでも言っているのだろう。
そういう和葉の手の中でも平次がカハーと『どこほっつきあるいとったんや、探したんやぞ』と言われる。
・・・・・ひとまず平次は無視して蘭ちゃんのほうを見ると彼女はきょろきょろと辺りをうかがってからクドウ君の口にキスをした。

思わず目をまん丸にしてしまうが、蘭ちゃんは一回一回明らかに怪しいことをしながらも
それでも一生懸命クドウ君にキスをしている・・・・
キスのたびにクドウ君が工藤君になってくる。

・・・・・歳の数だけキスするんかな?

見ていると多分・・・・10歳過ぎくらいの工藤君と目が合った彼はパチンと音でも出てそうな見事なウインクを決めると
自分より背の高い蘭ちゃんの首に腕を回して引き寄せると・・・・大人なキスをしだしたのだ・・・

流石にそれ以上は見ていることが出来ずに平次に視線を戻す。

取りあえず頬に二回ほどキスしてみるが変化はない。平次は何を思ったか照れている・・・・
和葉う〜〜と少し考えたがこれがファーストキスになるわけではない。
セカンドなのでいいかと思いながらも、17回もするのだから情緒がないな〜と思う。
大きく息を吸い込んで気持ちを落ち着けると和葉は意を決してその口に連続でキスをしていく。
ぼんっと突然大きくなった平次だがなんかまだ小さい。
それが足りないのだと言うことに気付いて、和葉は機械的に平次にキスをしていく。

すっかり元に戻った平次は突然のキスに目を丸くするばかりだが・・・
和葉の後ろで公衆の面前関係なく今の工藤が蘭ちゃんに不埒なことをしていた・・・・




テレビからはアナウンサーの絶叫が聞こえている。
工藤君はアレだけ素直に蘭ちゃんに会いたいって言っている。少し羨ましい気がする。

「蘭ちゃん・・・ええな・・・・」

思わず零れてしまった言葉に平次はへっとびっくりした顔をしたが・・・聞きようによっては自分に都合のいいように聞こえる。
・・・蘭ちゃんが羨ましいってことはなんや我慢しなくてもよかったんやないか。
告白する前にキスをしたことを和葉はたいそう文句をのべたので自粛していたのだがその必要はなかったということだ。
(止まらない狼たちと小悪魔ちゃん’ず参照・・・笑)
お茶を置いたところを見計らって腕を引っ張りその唇を奪う。
びっくり眼は初めてしたときと変わらない。

「な、突然なにするんや!?」

真っ赤になって口を押さえる。

「蘭ちゃんが羨ましいって言うたやろう?これとちがうんかい?」

横に座って顎を取りもう一度その甘さを味わう直前。


音もなくふすまが開いた・・・

「あら、お邪魔様〜」

二人で固まり、ふすまを開けたおかんはかろやかに何事もなかったようにふすまを閉じた。







梶高克夢さんのサイト『快青のお部屋』でカウンター1000をゲットした時に戴いたお話です。
『コハーを見ている怪盗と西、あーはならないぞ』というなんともおかしなリクをしてしまいました。
ありがとうございました〜vv
そして、UPがかなり遅くなった事、お詫びします。ごめんなさい(涙)