『幼馴染み』





学校帰り、快斗と青子はいつものように歩いていた。


「よく毎回毎回寝てられるわね」
「仕方がねぇーだろ、眠てぇーんだから」

快斗は青子から説教を食らっていた。
快斗が授業中寝ているからである。

「早く寝なさいよぉ!」
「はいはい…」
「‘はい’は一回!」

目の前に顔を出し言った。

わぁーたよ、努力するよ」

快斗がそう言うと青子は笑顔になった。
その笑顔に見惚れてしまう…


(可愛い…)


「ねぇー快斗」
「あんだよ?」
「青子ね、クッキー作ったの。食べない?」

上目遣いをしながら聞いてくる。


(青子…それ反則)


と言いたいが言えない。


「しゃーねぇーな食べてやるよ」

本当は食べたいくせにこんな口調…

「…食べたくないなら食べなくていいよ…」

しゅんと青子は顔を下にした。

「あ、あおこ…っ!」





慌てて言い直そうとした時…




「青子会いたかったー」




その言葉に快斗は「はぁ!?」とした顔になった。


目に入って来たのは知らない男が青子を抱いている。

「わぁ!真くんだぁ」

青子はその男に対して親しいように名前を呼んだ

「真くん?」

不思議そうに快斗は聞き返す。


「うん!青子の幼馴染みなの。快斗は知らないよ。まだ会ってない時の人だから」
「青子!嫁に貰いに来たぞっ!」
「はぁっ!?」



快斗はとんでもない声を上げた。


「昔青子を嫁に貰う約束したもんな〜vv」


撫で撫でと青子の頭を撫でる。



(青子の頭に気安く触んじゃねーよ!!)



真が取る行動に腹立てていた。

「でもあれは昔のことだよ…?」
「そんな約束したのかよっ!?青子!」
「でもあれは…」


青子は体を前に出して快斗に話す。
それを見た真が自分の方に引寄せる。

「アンタ誰?」

快斗に話しかける。


(こんな奴に名乗りたくねぇ…)

「黒羽快斗」
「ふ〜ん‘くろはねかいと’くんね」


その呼び方に二人は驚いた。

「「くろはね」」


快斗は思わず吹き出した。

「馬鹿じゃねぇーのオメー?」
「馬鹿なのはアンタの方だよ?携帯で黒羽なんてでてこないんだよっ!」


そう真に言われ呆れた顔で見て口を開いた。

「んなもん登録すりゃ簡単にでてくるじゃねーか、アホくせぇー」



このIQ300の快斗様をなめんなよ…。

はぁ…と溜息を着いた。


快斗はこいつを争う価値がないと勝手に頭で判断した。
新一や白馬なら引けないが、こいつは…。
真はそんな快斗の態度に腹を立てた。

「なら…アンタは青子のなんなんだよ?」

その質問にびくっとした。

「俺は青子のフィアンセだ。婚約者だ。アンタはなんだ?」


勝ち誇った笑みで快斗を見る。



(こいつ…)



「ちょ、ちょっと真くんそれは言い過ぎっ!青子、真くんの婚約者じゃないもん!」

と青子に拒否られた。

「はぁっ…バーカ。拒否られてやんの?」



ざまぁーみろ!と内心思う快斗と怒りに満ちている真…。


いわば子供の喧嘩である。
好きなものを取られたくないという…。
お互い火花をバチバチ散していた。
快斗はちょっとした隙をみて青子の腕を引き寄せた。


「オメーとくだらない遊びしてる暇ねぇーんだよ!」
「か、かいと?」


いつになくムキになる快斗を見て青子は不思議そうに見ていた。


「青子、クッキー作ったんだろ?」
「う、うん」
「食いに行くぞ」


赤く照れながら言った。
耳まで赤くなっている。
青子はそんな快斗に気付いているだろうか?


「食べてくれるの?」
「…仕方ねぇーから食ってやるよ…」


ぶっきら棒で素直に言葉が出て来ない。
ホントは青子の作るお菓子が大好きなのだ。
そんな快斗を見てクスと笑って言った。

「じゃぁ青子も食べさせてあげる!」

青子の返事にきょとんとするが笑って応えた。

「有難く頂戴するよ」

これが二人の会話…。
二人とも頑固で一歩も引かない…。
‘恋人’という道はまだまだ先になりそうだ。

「おい!まだ俺が居るんだぞ」
「あ…いたの?」

素っ気なく返事を返す。

「勝手に俺の存在を消すな!?」
「あれ??元々いないと思ったけど?」

フッと鼻で笑って言った。


険悪な雰囲気…。
青子は喧嘩になると思い、二人の前に割って入った。

「二人とも喧嘩はダメだよぉ!」

ぷーと頬を膨まして見る。
そんな青子を見て快斗はぷっと笑ってしまう。
青子らしくて

「笑うなぁー!」

二人の会話を聞きながら益々腹が立つ真…気に入らない。
そしてハッと思い付きまた笑みを取り戻した。

「そうだ…青子?」
「な、なに?」
「綺麗な体になったかい?」
「えっ、ちょっとなに言ってるのっ」
「あの時二人で入った風呂は忘れられないな」
「い、いつの話してるのよ!!!」

慌てて青子は言った。
いつお風呂に入ったかも覚えてないのに…
そんなこと言われたら…快斗の方を見ると…怖いくらい顔が引きつっているが、笑顔だった。
真の方もそんな快斗を見てびくっとしたがニヤッと笑った。

「俺たちはそんな関係なんだよな青子?」

追討ちをかける様に言う。


(このヤロ…俺に何処まで喧嘩売る気だ…)


それそれ限界と言う所だろうが、流石が快斗である。
まだ耐える。

「だからなんだよ。どーせガキの頃だろ?アホくせぇー。んなもんに拘るオメーはガキ以下だな」

痛い一言、一言がザクザクと真斗に刺さってきた。
これ以上言えば…どんな痛い言葉か返ってくるか判らない…。
だがここでひけば、青子は快斗のものになる…それだけは…

「ガキ以下で悪かったなぁーどうせ俺はガキ以下さぁっ!」


(開直るか…普通…)


呆れてものも言えなくなって来た。

「なにやってんだ…俺」

言う気を無くした快斗は青子のスカートを捲り上げた。

「いやん!!」

青子は必死にスカートを押さえた。
それを見た真は顔を押えた。

「フッ…これくらいで鼻血だしてるよーじゃ無理だぜ?」

そんな快斗の台詞に青子はポカッと殴った。

「なにすんのよっ!バ快斗っー!」
「んな叩くことねぇーだろ!いつものことじゃねぇーかよ」
「快斗が日常にしてるんでしょっ!」

真っ赤になって怒鳴った。

「それに…」
「それに…なによぉー」
「クッキー食いてぇーしな」
「えっ」
「だから逃げるが勝ち!」

快斗は青子の手をしっかり握りしめその場を走りだした。
強引ながろもこうでもしなければ終わらない。

「コラー俺の青子を連れてくなぁっ!」


(いつからオメーのになったんだよっ!青子は最初から俺のもんだっ!)


口に出して言えないのが…悔しい…。

「青子!また明日会おうなぁー!!」



(とっとと帰れっ!このお邪魔虫がっー!!!)


「か、快斗っ!」
「あんだよ!」
「家…通り過ぎてる…」
「あ…」

真から逃げるのに必死に走ったため青子の家を過ぎてしまった。

「わりぃ」
「もう」

方向を変え今度は歩き始めた。
走るのは止めたが、手は握ったままだった。
どうやら手を握られているのは嫌ではないらしい。
快斗もそのまま握っていた。
青子が嫌と言えば放せばいい…今だけ…青子の温もりに触れていたかった。
綺麗な手…二度と放したくない。


(青子オメーは俺のことどう思ってんだ?単なる幼馴染みか?それとも…)


いつの間にか青子を見詰めていた。
じっと見てくる快斗に首を傾げた

「どうしたの、快斗?」

青子に指摘されハッとなって気付く。

「なんでもねぇ…」
「今日の快斗、なんか変だね。ムキになってばっかり」

クスクスと笑う青子を余所に思う。


(オメーのためにムキになってんだよ…判るか、この気持ち?)


はぁ〜と溜息を付きながら一息。

「ほら早くっ」

青子は俺の手を引っ

「はいはい。なら早く中に入って!」

青子は快斗の手から離れて行った。
青子の手が離れた手は…淋しかった。
一人だけ残された気分になる。

「ご飯食べてく?」

青子は台所からエプロンをしながらひょこっと顔を出す。

「食ってく…腹減って死にそう…青子早く〜」
「今作るから待ってて!机の上にあるクッキー食べて」
「青子が作ったやつか?」
「そうだよ!後で感想聞かせてね」

手を伸ばし口の中にクッキーを放り込む。
旨い。
青子の作るのは何だって旨い。
マズイ訳がない。
マズイと言った奴は命ねぇーな。
ハッと笑いながら思った。

この気分新婚気分最高だった。
これぞ幼馴染みの特権!
アイツは俺の知らない青子を知っているかもしれないが、
俺は今の青子を全てと言って良いほど知っている。
昔の青子も知りたいが、今ここに青子が居ればそれでいい…。
青子のことは俺の方が断然知っているから。

あの日の出会いに感謝している。
きっとあれは偶然なんかじゃない…運命だよな…青子?
そう考えると気分が良い。

「はい、どうぞ」

青子はテーブルに料理を置いた。
どれも美味しそうだった。

「どうだった?」
「なにが?」
「何がじゃないでしょ!クッキーよ!」
「あ、クッキーね、旨かった」
「ホント?」

珍しく快斗が素直に`旨かった'と言ったので逆に不思議に思った。

「…ねぇ…快斗」
「あ?」
「熱でもあるの…?」

青子は自分の額を快斗に合わせた。
目の前には青子の顔…やべぇ…このままじゃ…っ!
快斗は慌てて青子を突放した

「なにすんだよ、アホ子!熱なんかねぇーし普通だって!」

青子は突放され少し驚いていた。

「そうだよね、ゴメンね。快斗が珍しく旨いって言うから…」
「たまには俺だって正直にいうぞ」

危かった…もしあの状態が続けば…青子になにをしていたか判らない。
焦っていて青子のことを突放してしまった…。

青子を見ると少し沈んでいるように見えた。


(青子…そんな顔すんな…)


席から立上がり青子の元に歩み寄った。

「青子?」
「なぁに?わぁっ!」

快斗の手からポンと音を立てて小さな花が出て来た。

「わぁー可愛い!」
「やるよ」
「ホント?ありがとう!」

嬉しそうに喜ぶ青子見たらホッとした。
青子はやっぱり笑ってるのが一番似合う…。


(青子…これからも沢山泣かすかもしれない。
でもその時は泣かせた分沢山笑わせてやるからいつでも笑顔でいろよ?
青子のためなら何だってするからさ)



こんなこと口に出して言えるもんじゃない。
でもお互いの思いが通じ合った時伝えたい。
これくらい君が好きで大切であることを…


(恥ずかしくて言えねぇーか…)


クスッと笑った。

「どうしたの?」
「いや、なんでもねぇーよ」

君が好きだよ、今すぐにでもこの思い伝えたい…。

「青子、俺飯食ったら帰るから」

その一言を言うと青子はぷーと頬を膨らました。

「今日一緒に洋画みてくれないの?」
「また怖いもん入るんだろ?」

そう言われ青子はビクッとした。


判りやすい…。


「だ、だってお父さん帰ってくるの遅いんだもんっ…」
「それで俺が一緒か?」
「…うん…」
「なにするかわかんねぇーよ?」
「なによぉー快斗のエッチ!!!」
「あんま叩くなよ、痛てぇーな」

二人は席に座り、夕食を食べていた。
いつもながらのくだらない会話が好きだった。
青子と一緒にいるこの時間が好きだった。
だから誰にも譲る気はない。
食事が終わりお腹が膨れると今度は眠くなって来た。

「あー眠みぃー」
「ソファーの上で寝ればいいじゃん」
「寝たら起きれなさそう…」
「全く。時間になった青子が起こしてあげるから」
「サンキュー…」
「青子がいないとダメだね、快斗」

笑いながら言った。


(だって青子いねぇーと生きていけねぇーもん…)


そして快斗はそのまま眠りについた。
寝ている快斗を見ながら青子は

「洋画一緒に見てくれるって言ったのに」

ふぅと息を吐くとタオルケットを持って来て体にそっと掛けた。

「お休み快斗」

微笑みながら台所に消えて行った。
それからどれ位の時間が過ぎただろうか…快斗は目を覚ました。
体を起すと快斗が寝ていたソファーによしかかりながら青子が寝ていた。

「ったく…起すって言ったのは誰だ?」

笑いながらスヤスヤ寝ている青子をそっと抱き抱え青子の部屋に向かった。

「青子…キスしていいか?」

寝ている青子に問い掛ける。返事は返ってこない
可愛くて仕方がない。

部屋の扉を開け、ベットにそっと寝かせた。
毛布を肩まで掛け頭を撫でた。
そして青子に判らない様に額にキスを落とした。

「どうか俺だけの青子でいて…」

その場から立上がり部屋から消えて言った。




青子が目覚めたのは朝だった。
何もないはずなのに額に手をやる。
熱がある訳でもないのに熱い…





「快斗…好きだよ」





ずっと昔から胸の中にしまいこんでいる言葉。

言う機会があるかな?言えたらいいな…
それが青子の小さな願いだった。

食事を済せ、制服に着替え外に出ようとした時玄関の扉が開いた。

「青子、行くぞ?」
「か、快斗今日は早いね」

赤くなりながも話掛けた。

「まぁーたまにはな」
「珍しいね」

青子はクスと笑い二人は家を出た。



もうすぐ学校に着く時校門から誰かが走ってくる。
快斗はその姿を見て嫌な予感がし、すかさず青子の前に立った。

「快斗?」

何故快斗が前に立っているか判らなかった。

「青子ーおはよー…なんだアンタか」
「うっせぇーオメーに言われたかねーよ」

機嫌の悪そうな声で返す。

「あ、真くん?」
「そこにいたんだ青子!」

快斗の後にいる青子の所までやって来た。

「どうしてここに?」
「今日からここの学校に通うことになったんだ!一緒だな、青子!」

それを聞き再び青子を後に隠す。

「はぁ!?マジで言ってんのかよっ!」
「勿論さ」


(マジかよ…最悪だな…ここまでしつこいとは)


呆れてしまうしつこさ…。

「青子、俺学校のこと何もわかんねぇーから教えてくれよな?」
「うん、いいよ」
「あ、青子…?」

青子の返事にびっくりする。

真はニヤと快斗に笑い掛けた。
この笑いがマジにムカツク…


(この野郎っ…)


そして青子は真を案内するために今は教室にはいない。
そのせいか教室の空気はピリピリしていた。
快斗の機嫌が悪いので皆は触れようとも話掛けようともしない…。
教室のドアが開き青子と真が帰って来た。

「青子、これからもいろんなこと教えてくれよ」
「いいよ」

青子は笑いながら席に戻った。
クラスの皆は何故快斗を敵に回す!と思っていた。

「快斗、また寝てるの?」
「ねみぃーの…」

拗ねた様な口調で返す。

「ちゃんと寝た?」
「ああ…」

快斗は言葉は返すが机から起上がろうとしない。

「ねぇー快斗」

青子は快斗の肩にそっと触れた。

「触んなよっ…あ…」

青子の手を振りはらっていた。

「ご、ごめん…」青子の顔から笑顔が消え雲ってしまった。
「くっ…」

快斗は立上がり教室から出て行った。
青子は振りはらわれた手をそっと握り締めた。
真は青子の所に掛け寄って来た。

「青子、大丈夫か?なんだよ青子が心配してくれてるのに」

「いいの、真くん。青子が快斗のこと怒らせちゃったんだもん…仕方がないよ」

快斗は屋上にいた。
別に青子にあんなことしたかった訳じゃない。
あんな顔見たくなかった。
青子は泣いているだろうか…

「ちくちょう…」

寝ながら溜息をついた。
いつもなら寝られるはずが、寝られない。
青子のことが気になるのでる。
快斗は起上がり仕方がなく屋上を去った。
このまま教室に帰るのがなんなので保健室へ足を進めた。

「先生…寝かせてくれるかなぁ?…」

保健室に辿着きドアを開けると誰もいない雰囲気…

「まぁ…いっか…」

ベットの方に歩いて行くと誰が寝ている。


(先客か…)


だがその姿をじっと見ると

「あ、青子っ!なんで!」

心臓が飛び出すかと思った。
元気印の青子がー?

「あら来たの?」

その声に振向いて見ると紅子が立っていた。

「なんで…紅子がいるんだよ、青子と一緒に?」

後に立っていた紅子に問う。
紅子はクスっと笑って答えた。

「彼女倒れたのよ?」
「た、倒れたってどういうことだよっ!?」
「あら私は何もしてないわよ?誤解しないで?」
「なら…なんで」
「理由は判らないけど…」

紅子はふぅと溜息を着いた。
実は紅子は理由を知っていた。
青子は紅子に付き添われながら呟いた。



       「青子…生理なの…だから」



(たまには悩んだ方がいいんじゃない、黒羽君?)


快斗は今だ悩んでいた。

「大事にしてあげなさい?」

紅子の言葉に

「オメーにしては珍しいこというな?」
「あら、いけない?」
「別に」

紅子は笑いながら保健室から消えて行った。

「変な奴…」

紅子を見ながら思う。
そして顔を青子の方に向けるとスヤスヤ眠っていた。

「さっきは…ゴメンな?」

青子の手を振りはらったことを謝る。
あの時はただ上手く対応することが出来なかった。
それであんな風になってしまった。

「ゴメン」

謝りながら青子の額にキスを落とす。
でも青子はそのまま眠り続けている。
まるで眠り姫の様だった。
口付けをしたら目覚めるだろうと思うくらい…。

青子を見ているとキスだけでは止められなくなってくる。
もっと青子に触れたい、押えようとするが体が勝手に動きだす。
意思に逆らう体の様だった。

寝ている青子の布団の中にそっと手を伸ばし制服に触れる。
お腹の辺りだろうと思う…。
そして布団を少し捲ると青子の体が現れる。
そっと腰の辺りに片手を伸ばし、制服の中に手を入れて行く…。
柔らかい肌に触れると心臓が高鳴る。
制服を捲り上げると白い肌が顔出す。

息を呑んだ。
そして顔を近付け唇で触れる。
ちゅっと音を立てた。
そこは赤く痕が残った。
青子の肌は思った以上に柔らかかった。
再び唇で触れて痕を残していく。
赤くなる痕…俺だけの証…誰にも渡さない…。


また顔を近付けようとした時

「う…っん」

と声が聞こえ慌てて顔を放した…。
そして我に返りハッとし手で顔を押える…。

「な、なにやってんだ…俺」

無意識の行動の様に感じた。
青子はまた眠りに入っていく。
快斗は布団を元に戻した。
見つかれば大変なことになる。
だが最後に見えない処にキスを落とす…



「青子…好きだよ…・」




あれから時間が経ち青子は目を覚ます。


夢の中で快斗に囁かれた様な気がする。

「起きたのか?」
「かい、快斗っ!」

夢のはずなのに快斗が目の前に居てびっくりする。

「な、なんでここに…?」

青子に聞かれ

「寝に来ただけ」

と答える。

寝に来たのは本当だか青子が心配でずっとここにいたなど言えなかった。

「まだ寝てないの?」
「青子がベット占領してんだから寝られるかよ」
「他にもベットあるでしょぉー!」

ぷーと膨れて他のベットの方に指を指す

「そこは俺専用なんだよ」
「専用ベットなんか作ってどうするのよ!」

いつの間にかいつもの会話に戻っていた。

「青子戻る」

そう言うとベットから体を出し立ち上がりあることした時体が傾いた。

「青子!!!」

快斗は慌てて走りだし青子を受止めた

「バーロっ!急に立つなっ!」
「ゴメン…」


青子は快斗の腕の中で抱かれていた
胸の高鳴り…早くなっていく…


(やっぱり…この腕の中が一番好き)


青子はそっと快斗の背中に手を回そうとした時逆に快斗に強く抱き締められた


「無理すんな…アホ子…」



心配してくれたんだ…。

言葉はこんな言葉だが…青子にとっては嬉しかった。


「ゴメンね…」

青子もそっと腕を回した。
このままこの時間が続けばいいのにとお互い思っていた。
だが快斗は青子を放し、もう一度ベットに寝かせた。

「えっ?」

青子は不思議そうに快斗を見る

「体調整えてから戻ってこい。それまで戻ってくるな」
「で、でも授業が!」
「ノートぐらいとっておいてやる」
「快斗…?」
「俺様をなめんなよ?」

ニヤと笑って言った

「寝たりしない?」
「可能性としてないとは言い切れないがな」
「ちょ、ちょっとっ!」
「まぁー任せておけ」
「任せれないぃーっ!!」

ヒラヒラと手を振り快斗は保健室を後にした


「全くもーう」

青子はバサッと布団を被る。
するとさっき抱かれた感覚がまだ残っていた。
頬が熱くなり真っ赤になる

「快斗…」

彼が好き…。





その頃快斗は眠りそうになりがらもノートをとっていた。
クラスメイトは珍しそうに見ている

(黒羽がノート書いてる…)
(大丈夫なのかな)




授業が終わり机の上で伸びているとそこへ真が現れた。

「アンタは青子に嫌われてる。青子は俺のもんだ」

笑いながらいった。快斗は平然とした顔で聞いていた。
むしろ笑顔である

「青子はものじゃねぇー、人間だ。
 俺は嫌われていてもあいつの傍だけはぜってー離れねぇーって決めてんだ。
 そして誰にも渡さねぇよ。渡す気なんてないけどな?」

ニコニコしながら答えた。


最後に

「文句ある、この俺に?」

とどめの一発…。


真は確信した。
この男には絶対に敵わないと…。

「ち、ちくちょう!」

真は席を離れて行ってしまった。


(最後まで疲れる奴…)


はぁ…と溜息を着き、次の時間の教科書を取出した。
皆、びくっとする。準備している…。


(これなら俺なりにまとめた方が遥かに判りやすいぞ)


またノートを取り始めた。

そしてノートを書きながら思った。
青子に自分の思いを告白しよう…。
いつかとなったらいつになる?
なら…今言ってしまおう…。



好きだよ、青子…誰よりも君だけが好きなんだ…

俺と一緒の時間を生きて欲しい…青子の気持ちが知りたい…。






3年前ぐらいでしょうか。
携帯を始めて持ったという佐倉井梢ちゃんから、メルマガ方式でいただいた作品です。
某茶会で話題になりまして、ご本人の許可が出ましたので、嬉々としてUPですvv

快斗の知らない青子を知っていても、快斗には敵わないのですよ(笑)