西洋の偉い人が生まれた日。
サンタが来る日。
街のイルミネーションが、一際輝く日。
恋人達の甘い日。


そして、


青子にとっては、風邪をひいた日。

快斗にとっては、仕事が入っちゃった日。





二人とも、厄日には間違いないみたい。


天気は雪。

ホワイト・クリスマス。












『unlucky X’mas day』











快斗の仕事は判ってたよ。
イベントの日って、たいてい展示会あるから。

それでも、出来るだけ長く一緒に過ごせるようにって、
時間の調整も色々してくれたのに。

よりによって、風邪ひいちゃうなんて。


今ならまだ間に合う。
そんなに酷くない。


快斗が仕事をしてる間にお薬のんで、横になってたら、
残りの時間を過ごせるだけの体力は保てる。



「・・・そういえば風邪薬、あったっけ?」



頭の中で組みたてた計画が、のっけから頓挫する。



薬箱に、目的のものはなかった。





「うそぉ・・・」





目と鼻の先のドラッグ・ストアまで、往復で20分。

いくら防寒対策をしたからって、この天気。
酷くなるのはほぼ間違いなし。



「だけど、このままじゃダメだよね・・・」



セーターの上にコートを羽織って、毛糸の帽子、手袋、マフラー、厚手の靴下。




可能な限りの防寒対策をして、家を出る。




「寒〜いっっ」





快斗が帰って来るまであと30分。

急がなきゃ。













超特急で仕事を終わらせる。


そりゃ、そうだろ。

今日はイブだ。

手に入れた甘い恋人と過ごす日だ。


理解のある彼女は、何も言わずに送り出してくれたけど。

ホンの少し、顔が赤かったように記憶している。


「風邪でもひいたかな」


これからどうするかは、青子の状態を見て、判断しよう。



地上よりも気温が低い上空。

白いスーツの下にチョッキを着てはいるものの、やはり寒い。


「さみぃ・・・」


あと少しで青子の家。




着陸の態勢に入ろうとした時、真下の公園を横切る影に気がついた。



「青子?」


慌てて青子の前方に降りた。






「女性が出歩く時間ではありませんよ?」













目の前に突然現れたKID。

まじまじと青子の格好を見てる。


(あはは、バレちゃったかな)


「薬・・・ですか?」
「あ・・・うん。風邪薬切らしてたから・・・」

「それでそんな格好を・・・」
「うん、でももう帰るよ。家すぐそこだもん」

「帰ったら、すぐに横になって下さいね」
「判ってるよ」



まだ何か言いたそうだったけど、
ここで話してたら、ますます酷くるから、
じゃあね、と手を振って歩き出した。


(急いで帰らなきゃ。風邪ってバレちゃったから、快斗飛んでくるだろうな)













予感は的中。
しっかり風邪ひいてやがった。
しかも薬を切らしてたから、とこの寒空の中にのん気に外出。


「・・・ったく」


青子の背中を見送って、再び空に上がる為、近場の木に昇る。

KIDの仕事の後は、必ず窓から入るから、もう少し飛ばなくてはならない。




「とりあえず、熱測って、布団に押し込んで・・・」













厄日になったとは言え、イブはこれから。

青子に負担のかからないように過すとしますか。













2005年冬に開催された『Winter Ring〜KAITO×AOKO』に出展した作品です。

当時のコメントがコレ↓
《突貫工事万歳!(逃亡します/笑)》

笑ってる場合じゃないってっば!!

2004年の企画同様、青い羽企画として“ぷちあだると”な作品もありました。
このページのどこかからリンク貼ってます。