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「やったぁ〜〜〜〜〜〜〜vv」
球場の狭い椅子の上で、小躍りして喜ぶ青子。
俺の反対も押しのけて、本日の衣装、例のワンピース。
そこかしこで応援歌の合唱が始まり、肩を組んで歌い出す輩。
勢いに乗って青子にも手が伸びてきたが、そんなことされてたまるか。
何で俺以外のヤツと青子が肩を組まなきゃならんのだ。
プロ野球日本シリーズ第一戦。
青子ご贔屓の球団ダイエーホークスvs阪神タイガース。
これは後で知ったことだけど、西の探偵は筋金入りのタイガースファンだそうだ。
日頃の行いが良かったのよ、と倍率がバカ高かったチケットを二枚ゲットし、はるばる福岡まで来た、というワケ。
ナイターゲームだから日帰りは出来ないと、ホテルの予約までしてやがった。
もっとも青子が予約したんだから、当然シングル2室。
せっかく二人だけだってのに、そりゃないんじゃない?
チケットを貰った直後にツインに変更したのは言うまでもなし。
欲を言えば、スィートが良かったんだけど、さすがに金銭的に追いつかない。
それに、ツインといったって、ベットは一つしか使わねーけどな。
くくく、当日が楽しみだね〜♪
「良かったな」
ホテルに戻っても、興奮覚めやらぬ青子。
今朝、ホテルについたとき、シングルがツインに変わってたことに、
ぎゃんぎゃんわめきながら反対されたが、既に満室、変更は不可。
ベットがちゃんと2つあることに妥協したのか、しぶしぶ受け入れてくれた。
「うん、すごいよ! サヨナラ勝ちだもん」
青子が果たしてどこまで野球のルールを知ってるのか、甚だ疑問だが、勝った事にとてつもない喜びを感じているらしい。
つまらないとは思いつつも、そこまで青子を喜ばせる野球に嫉妬をする。
「明日も勝つといいな〜、テレビでしっかり応援しなきゃ」
青子がとったチケットは今日の分だけだから、当然、次はテレビで観戦。
明日には東京に戻る・・・わけないだろう。
「青子、手出してみ」
「え?」
1・2・3!
青子の手のひらに、長方形の紙切れが二枚。
先日、屋上で渡されたものと同じモノ、ただし日付けは明日19日。
続けざまに、ポンポン出てくる紙切れに、青子の目はこれ以上ないというくらいに開いたまま。
結局、合計6枚の紙切れを手に、青子は固まったまま。
「え? これ・・・」
「ん? 一応第四戦までのチケット。せっかくだから、大阪にも行こうぜ」
「か・・いと? どうして?」
「ばぁか、本当はさ、青子がシリーズのチケット買うことぐらい判ってたよ。多分今日の分だけだろうってのもね」
だから、自分も八方手をつくして、このチケットを手にいれたのだ、と。
「う・・・嬉しいけど、学校は?」
「サボリだろ?」
「えぇぇぇ!」
嬉しいけど、学校サボるのはどうか、とか、ブツブツ言ってるが、
既に大阪も寺井ちゃんのツテでホテルを押さえてあるんだ。
キャンセルなんてさせねえからな。
「青子、御祝いしようぜ。第一戦の勝利に」
「御祝い?」
2度目のマジックでテーブルにワインが注がれたグラスが並ぶ。
青子の口にも合うように、アルコールは低め、甘口のワイン。
「わぁ〜vv」
グラスを渡し、窓際で乾杯をする。
夜の街並みの明かりをバックに、まずは一口。
追加は俺のグラスのみ。
青子が飲み干したところで、グラスを取って、3度目のマジックで消す。
「あ! 青子のグラス!」
いいんだよ、後は俺の口からな♪
まだ飲む、と言う青子に甘い笑みを向けて、一口含む。
俺のする事をきょとんとして見てる青子を引き寄せ、手を頭に回し、キスをする。
口移しでワインを飲ませ、端からこぼれた雫を舐め取る。
青子はアルコールに弱い。
低めのワインと言えど、一杯で赤くなる。
「ん・・・、甘い・・・」
コクン、と飲み干して、赤い顔が更に赤くなる。
「快斗・・・」
「青子・・・」
同時に名を呼んだ。それが合図。
そして、甘い時間が始まる・・・。
ここにおまけ1が入ります。裏へ行こう!
翌日の試合もチームは絶好調だったのか、見事勝利。
13点と大量得点に、昨日以上に青子は上機嫌。
不謹慎だが、俺には勝敗は関係ない。
勝てば御祝い、負ければ慰める。
まぁ、勝った方が青子の機嫌がいいのは当然だけどな。
明日は大阪。
移動日とやらで試合はない。
青子のやつ、大阪に行くと決まったとたん、和葉ちゃんに連絡いれたらしい。
当然、服部の耳にも入ってるだろう。
二人だけでいたかったってのは正直あるけど、たまにはいいか。
「青子、ほら、御祝いだ」
昨夜と同じワインとグラス。
ただし今日は最初からグラスはひとつ。
それが意味するところを理解したか、青子は既に真っ赤。
上目遣いで俺を小さく睨んでいる。
あ〜、それがヤバいっての。
「乾杯!」
ウィンクをひとつして、再び甘い時間へと進んでいった。
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